めずらしく憂鬱そうな顔をした妹が、リビングでぼーっと天井を見ていた。

妹は19歳、介護系の専門学校に今年から通い始めている。

どちらかいえば、考えるより行動が先の妹が、考え込んでいるなんてかなり奇妙だ。

「どうかした?」後ろから、ちょっと声をかけてみる。

「あっ、兄ちゃん・・・・。」 妹は困ったなぁ、って顔をしていたけど、悲しげとかじゃない表情…。

どうやら失恋したとか、そんな風ではない。

安心して、相談に乗ってあげられそうだ。

妹はちょっと一息あけて、こう言った。

「あしたさぁ、ち●こ触んなきゃいけないんだよ・・・。」

「はぁ?なんだそれ?」

ちんこって、あーた。



「明日、介護実習でさぁ。老人介護の施設行くんよ。

一日、担当したご老人の介護するんだけどさ、下の世話するジャン。

そうなるとさぁ、人生初ち●こ触るわけなんですよ。」

なるほど。ん?人生初ち●こですか?

彼いたじゃん。高校生のときさ。



そんなことを思いながらも、さすがに人生初ち●こに関しては

突っ込んで聞くわけにも行くまいと思いつつ

「でもな、介護ってのはさ、そういうもんだろ。

それを分かってて、その道に進んだわけだろ。」

我ながら、馬鹿みたいに正論を言ってみる。

「そんなことは、分かってるよ。うん。

介護ってのは、大変で、辛いから、こうやって事業になって、

大きなお金が動いて、人が必要とされてるってのは。

だから、のほほんとしてる私でも、しっかり稼げるかと思ったんだけどね。」

うっ、俺よりちゃんと考えてやがる・・・。



ちなみに俺は、アルバイトしていた本屋を、大学卒業後スライドして社員に。

給料は・・・・・・、実家暮らしでよかったと思う程度。

「じゃあ、なに悩んでるんだよ?」

「悩んでないよ。ただ、悲しいのよ。

なんで人生初ちんこが、ご老人のち●こなのかしら。」

「誰のかわかんない、ち●こよりはいいだろ。」

妹は唇を尖らせて

「なんで私が、誰のち●こか分かんない、ち●こ触んなきゃいけないのよ。」

と、呟いている。

ちょっと頭が痛くなった。



「あのなぁ。お前も女なんだから、ち●こ、ち●こ連発すんなよ。」

「じゃあ、・・・・おちんちん?」

「それもなぁ・・・。」

なにを思ったのか、妹はいきなり立ち上がり

「ペェニースッ!」

と変なドイツ語風発音で叫んだ。

「ちょっと、お前っ」

「ペェニースッ!ペェニースッ!ペェニースッ!」

俺のつぼに入った。腹が痛い・・・。



妹は調子に乗って

「ダズ、イッヒ、ペッ、ペッ、ペェニースッ!」

とか、わけ分かんなくなっている。

ちょっと喘息の発作が出そうなくらい笑った。

ひとしきり笑ったあと、リビングのソファーに二人並んで

のんびりと話し始めた。



高校のときの彼に関しては、妹から話してくれた。

「なんか、まだ早い、まだ早いって感じで、

キスして、手を握って満足してたんだよね。

ん、向こうは満足してなかったかも。

なんか、恥ずいね、こんな話。

だから、人生初ち●こはご老人のち●こなのよ。」

なんだかなぁ。



「ペェニースッ。」

と言ってみる。

「ペェニースッ。」

と言って返してきた。

そんなこんな、話していて、俺はちょっとソファーから

立ち上がった。



「兄ちゃん、どこ行くの?」

「ん、ちょっと。」

妹はニヤリ、と笑った。

ニヤリって文字が浮かんでそうなくらい

ニヤリと、笑った。

「トイレ行くんでしょ?」

・・・・そんな話になったら嫌だなぁ、と薄薄思っていた。

「だったら、どうだって言うんだ?」

「私の人生初ち●こにしようかと・・・。」

急に心臓がバクバクした。

自分でもビックリするくらい、ドキドキした。



すんなり、気の利いたギャグで返せればよかったんだけど、

妹の「人生初ち●こにしようかと・・・。」に

すごくグッときていた。

思えば、この時、人生で初めて妹を

異性として意識したのかもしれない。

「馬鹿を言うなよ。大体、あれだ、

うちのトイレは二人では入れませんよ!?」

トイレが二人で入れないのが問題ですか? >俺

なんか、期待してませんか? >俺

妹はニヤリと笑ったまま、いや、心なしか顔が赤くなっていた。



妹はちょっと考えて、思いついたことを次々口にする

「どうする?お風呂なら大丈夫かな?」

「なにが大丈夫なんだよ!俺の気持ちも考えろよ!」

「あのねぇ、介護ってのはそういうもんじゃないでしょ。

介護する側も、恥ずかしいとか、汚いとか、そんなの思わないの!

だって、そんなこと思ったら、安心して介護を受けられないでしょ!」

なんか、急にテンション上がり気味じゃないですか?



「それにね、おじいちゃんとかでも、ち●こ触ると

大きくしちゃう人とかいるんだって。

でも、それはしょうがない事らしいの。」

なんとなく、うなずいて

「男って、おしっこ我慢してると立ちやすくなるんだよ。」

と、へんな予防線を張った。

妹は眼が笑ったまま、真剣な表情を作ろうとしている。

「兄ちゃん、もし兄ちゃんが両足折ったりして入院したらさ、

きっと私が付き添いに行くと思うんだよね。

そん時ち●こ触るか、今触るかの違いジャン。」


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